[44] 一休み 投稿者:行徳 浩二 投稿日:2001/09/01(Sat) 16:05
「別にへーきだぜー。俺もそろそろ休み時間だしなー」
狩谷にそう告げると、店内奥へ向かって声を張り上げた。
そうでもしないと、この喧噪では届かない。
「良祐ー! 交代ー!」
呼ばれやってきた従弟に「後宜しくな」笑いかけて場を離れると、店のエプロンを外した。
「ちっと待っててくれなー。今訊いてくっから」
「おー。お待たせー。向こうの道路一本越えたトコなんだけどなー、伯父貴の贔屓の魚屋があるんだとさー。
んで、ものは相談なんだけどなー、俺も混ざってもいいかー? その磯辺焼き、さ」
料理は委せろよ。
そう云って、笑った。
ソレっぽいメルアド計画進行中(笑)
[45] 大歓迎 投稿者:狩谷 東 投稿日:2001/09/01(Sat) 19:32
「行徳が来るなら、まともな飯になりそうだな」
と、こちらも笑って歩き出す。
ちらりと財布の中身が頭をよぎった。
「魚屋か……」
「10人弱ってところだから、そうだな、適当にすればいいか……」
「そうだ、行徳、3時頃とかもヒマあるか? スイカ割りをするんだが」
言ってから、別に昼にやってしまっても問題はないんだよな、と思った。
まあ、それはなりゆきまかせでいいだろう。
話しているうちに魚屋に着き。
「……どれがいいんだ……?」
魚の種類に戸惑い、そのまま口ごもった。
メルアド、挑戦(笑)
[46] 気の迷い 投稿者:三上 彩香 投稿日:2001/09/03(Mon) 16:02
神社、と言えるようなものでもない。社とか祠とか言ったほうが
いいくらいの小さな神殿だ。あまり熱心に手入れもされず伸び伸びに
なった草と木々が、視界を不明瞭にしている。海辺からはかなり離れて
しまった。ついついと、こんな所に来てしまうのではなかったと心底
後悔している。なぜなら、
「いや、離してください!」
丸坊主の男、といっても彼女と同じほどの年齢だろうか……に組み敷かれて
しまったから。
誰も来ないよ、と下卑た性根を剥き出した声が聞こえる。この男だけではない
他に4人の男が、どこかから連れてきた女性を二人で抑え、あと二人は
にやにや笑っているのを、絶望に満ちながら見てとった。
ワンピースの裾に男の手がかかった。
[47] 餓狼 投稿者:扇谷俊介 投稿日:2001/09/03(Mon) 16:23
仲間の二人に片方の女を任せ、相棒の山内が抱える少女に歩み寄った。
服の裾を両手でつかみ、たくし上げようとする山内の手に必死で抵抗する
姿が、彼の心を刺激する。
「ははは……一人でこんな所に来るほうが悪いんだよ、おい」
手伝ってやろうと、少女の両手を片手で捻りあげた。
そして山内に顔を合わせようとして、異変に気づいた。
ドンという鈍い音がして、丸坊主頭の相棒がスローモーションのように
ぶっ倒れたのだ。
他の3人も気づき、こちらを注視した。8つの目が、昏倒した山内と
そこに転がっている物を確かめる。
細長い特徴的な作りの棒……それは破魔矢だった。
「……誰だ、ジャマをしたのは!隠れてないで出て来い」
気味の悪さを振り切り、社に向かって吠えた。
[48] 岩場、到着。 投稿者:河内 荒 投稿日:2001/09/03(Mon) 20:20
「大体、こういうのは、流の領分だろうが」
注意をそらせばすぐに滑って転びそうな苔の上。
辺りを見回しても、食い出のありそうな物など見当たらず。
(尤も、彼は本当に「見回した」だけだったけれど)
「やっぱり、素直に店探した方が良さそうだな」
と、何やら騒ぎ立てている声が耳に入った。
女子が数名固まって、岩場をのぞき込んでいる。
ひょっとしたら、地元の人間が何か捕っているのかも知れない。 …いや、どちらかといえば、見慣れない生物を探して楽しんでいる風にしか見えなかったけれど。
「…ダメ元だ」
些か、この暑さに苛ついてもいた。
手がかりがあるならばとっとと手に入れてこの不毛な時間を終わらせたかった。
「ちょっと、訊ねたいんですけど」
多分、突然声を掛けたのに訝しんでいるのだろう視線を受けながら。
簡潔に、訊ねた。
「この辺で、魚とか売ってるような店、知りませんか」
何でこんなことしなきゃならないんだ、と、浜辺で楽しんでいる弟を、恨めしく思いながら。
[49] まあ…… 投稿者:巴 萩乃 投稿日:2001/09/03(Mon) 22:57
突然かけられた声に振り向き、一瞬、声を失った。
星火新聞で見た、河内兄弟のひとりだと、一目でわかったからだ。
ただし、……ただし、彼ひとりきりということに、いささか失望を覚えずにはいられなかったけれど。
「河内荒先輩……でよろしかったでしょうか?」
言いながら、立ち上がる。
「わたしたちも、星火の学生ですの……。1年生ですけれど。わたし、巴萩乃と申します」
「魚屋……」
彼女は微かに眉をひそめた。
ここにいた目的を、思い出したからだ。
「わたしたちも、そういうものを探しているところでしたの」
魚屋の場所は知らないが、一緒に探すことを提案しようとした時だった。
「萩乃ー」
呼ばれてそちらを見やると、岩場に入らないぎりぎりのラインで狩谷東が手招きしていた。
彼の隣には、その友人らしき男子生徒が立っている。顔は覚えているのだが、名前はなんといっただろうか。
そんなことより、今は彼らが持っているもののほうが重要だった。
「魚とか、調達してきた。これから焼くから、戻ってこい。……他のみんなも……って、あれ?」
東が荒を見て不思議そうな顔をした理由は彼女にはわからなかったが、とりあえずこう言った。
「すぐ行きますわ」
「じゃあ、戻りましょう、みなさん」
「河内先輩、東にきけば魚屋の場所がわかりますわ……どうぞ御一緒に」
言って、だいぶ慣れてきた岩場を足取り軽く戻りはじめる。
視界の隅にうみうしの姿を発見し、数秒足を止めたがなんとか振り払うと、魅惑の地を後にした。
[50] 合致 投稿者:河内 荒 投稿日:2001/09/04(Tue) 11:30
「ああ、じゃあ浜でバーベキューって云うのは、君等の事だったのか」
砂浜の方へと戻りながら、自己紹介がてら話を聞いてみれば何の事はない、全員、目的は同じだったらしい。
取り敢えず、この中では主催に当たると思われる狩谷に、向き直った。
「すまない。弟は、後先何にも考えないで行動するような奴だから…本当に、迷惑じゃ無かったか?」
どんな風に輪に入っていったのかは知らないが、どうせろくな事はしてないだろう。そう、決めつけていた。
…そういえば、星火に入る前にも同じ様な目に合った覚えがあるのを思い出した。
常に発端は流で、自分は収集をつける側なのだ。そうして後で二・三の小言を云ったところで、どうせまともに聞きもしないだろう。
「…くそっ」
小さく、悪態を吐いてから、重要な事を思い出し、口にした。
「その、魚とか…結構したんじゃないか? 適当に、計算出してくれ。後で出すから」
どうせ、流は遠慮会釈なしに食べまくるに決まっているのだ。
おおー、先輩喋りってちょっとどきどき(笑)
[51] 開始 投稿者:狩谷 東 投稿日:2001/09/04(Tue) 20:10
「いや、迷惑なんてそんなことありませんよ」
荒のほうを見て、丁寧に言った。
「人数が増えるぶんには、全然。こういうのは少人数でやるものでもないですし……男手があったほうが片付けも楽ですよ」
な、行徳。
と、隣の友人に笑ってみせる。そして、再び荒のほうを向き、
「魚は、こっちの行徳の知り合いのところで買ったんで、値段は思ったほどじゃなかったんですけど」
事実を素直に述べ、連れたちの姿を眺めやり、
「食べてみてから、考えましょうか。ひとによって食べる量、違いますから、それ見てからってことで」
「平ー」
近くまで戻ってきたところで、呼びかける。
「魚、調達してきたぞ。火の係り、代わるよ。すこし休んだらどうだ? ああ、これもあったんだ」
持っていた焼きそばのパックを平に渡した。それから、行徳のほうを振り返る。
「じゃ、行徳。頼む」
[52] 道すがら。 投稿者:河内 流 投稿日:2001/09/05(Wed) 16:41
宿舎に重たい荷物を置いて(殆どは流が自らの希望で持っていった不要品だったが)、いざ磯部焼きの場へと、雫と二人歩いていると、不意に、いい匂いが鼻孔を直撃した。
…大判焼き。あんことクリーム、チーズもあるな。ん~いいところにいい屋台が出てるもんだ!
「雫、あれ、買ってかないか」
反射でそう妹に尋ねる。
勿論、彼としては「一緒に食べよう」的解答を期待していたのだが。
「…流くん、お金、持ってないでしょ?」
妹は、聡明だった。
一瞬言葉を詰まらせた流に、雫は淡々と告げる。
「荒くんが、ご飯買いに行くのに持っていったんでしょ?
今から荒くん探すの大変だし、ひょっとしたら、もう食べる場所に居るかも知れないから、先にそっち行こうよ。
そうしたら、みんなの分、買いに行こうね?」
「…そうだな」
兄のプライドが、ちょっとばかり、彼方に消え去った気がした。
[53] 食材を眺めやって。 投稿者:行徳 浩二 投稿日:2001/09/05(Wed) 17:14
「んー、野菜、ちっとパチってくりゃ良かったかなー」
料理好き魂として、多少なりと栄養価が気になったりもしたが。
「まー、こういうモンはノリだよなー」
適当な場所に腰を下ろすと、バイト先から持ち出した竹串に──竹を割り箸大に割った、串と云える限界の様なシロモノだったが──魚を一尾ずつ、通し始めた。
「やっぱ、こういうところで作るのは、豪快じゃないとなー」
塩だけ軽く降って、火の周りにくべていく。
「ホイルでもあれば、鉄板の方でホイル焼きも作れるけどー」
「お、なーんだ、ある程度の一式はあるんだなー」
色々と、平の出してきた「ある程度の一式」を見てから、やはり、野菜を持ってこようと決意した。
…ただの、料理魂で。
「わり、俺、ちっと戻って他の食えるもんちっとみてくるわー」
「魚なー、出てくる油が透明になったら、大体平気だからなー」
それだけ伝えると、急ぎ、駆けだした。
パチるとかチョッパるとか云うけど…語源はどこなんだろう…
[54] さすが 投稿者:狩谷 東 投稿日:2001/09/06(Thu) 19:49
手つきがいいな、と感心する。
「野菜? なにからなにまで……悪いな」
行徳が野菜を求めて去っていく背中に声をかけた。
しかし、どうも行徳は好きでやっているようにしかみえなかったので、
その点、あまり気にしなくともいいのかもしれない、とも思ったが。
ふと視線を戻すと、萩乃が感心した様子で火の傍にしゃがみこみ、
魚が焼けるさまを眺めている。
(……萩乃、魚の丸焼きなんて食えるのかな)
素朴な疑問がよぎったが、口にしたのは別の言葉だった。
「あんまり近づくな、萩乃。髪が焦げてもしらないぞ」
それをきいて、萩乃はむっとした様子でこちらをにらんだが、
1歩分だけ、あとずさった。
微かに、香ばしい匂いが漂いはじめていた。
[55] 浅い眠り 投稿者:尾身 彰人 投稿日:2001/09/07(Fri) 10:38
暗い社の中からでも、御扉を透かして外は見えるし声も聞こえてくる。
浅い眠りを破られ、その原因がつかめると彼は、何だか不機嫌になった。
だからここで見つけた神体の矢を、格子越しにぶつけてやったのだ、
力の限りに。
それでもなお、歯向かってくる狼がいる。
打ちのめしてやってもよかろう、そう思って御扉に手をかけた。
[56] 強力な助っ人 投稿者:平 哲郎 投稿日:2001/09/07(Fri) 16:57
おお、すげえな。立派な料理人じゃねえか。
行徳の慣れた手つきを眺めて思う。
野外料理の醍醐味についても充分心得ているようだ。
おかげで最初はいくぶんみすぼらしかった料理が、これでかなり立派なものになりそうだ。
本当に東は強力な助っ人を連れてきてくれたものだ。
それにしても二人で始めて気が付いたら総勢8人だ。
流先輩が言っていた二人と合流すれば10人か?
「賑やかな飯になりそうだな」
笑って火の番をしながらひとりごちた。
長い間書き込んでなかったせいで、状況整理にてんてこまい(汗)
[57] 到着。 投稿者:河内 流 投稿日:2001/09/10(Mon) 15:58
「お? なんか人数かなり増えてんな~」
場にたどり着いてみれば二桁に近そうな人数が、火を囲んで座っていた。
即席竈には、既にいい匂いの食材が並んでいる。
料理に期待が出来はじめたのも勿論だが。
(野郎ばっかじゃやっぱ面白くねぇもんなぁ~)
女子が何人か居るのも、彼にとっては嬉しい出来事だった。
「ほんじゃま、お邪魔しま~す、っと、そうだ」
荒に向き直り、右手を開いて突き出す。
「あっちにさぁ、旨そうな大判焼きの屋台あったんだよ。
適当に買ってくるから、金、パス」
荒が眉間に皺を刻み込むのを見て、小言のひとつでもくるかと身構えたが、そのまま腰のポーチを探り始めたのを確認すると、ニッと笑った。
[58] ぼふ。 投稿者:巴 萩乃 投稿日:2001/09/10(Mon) 19:49
声がして、そちらを見て。
ぼふっと音がしそうなほど、顔が赤くなったのを自覚する。
(は、はしたないですわ、だめですわ)
視線をそらしたけれど、のぼった血はなかなかおりない。
それはたぶんに火の近くにいるせいもあったのだが。
しかし、ふいに思考が別のところにとんだのは、聞き慣れない単語のせいだった。
そして、隣にいる青木にたずねた。
「ユカさんは御存知? おおばんやきって……」
[59] はふ。 投稿者:狩谷 東 投稿日:2001/09/10(Mon) 20:03
「もう食べられるだろう」
竹串に手を伸ばした。匂いが素晴らしくいい。きっと美味いだろう。
「あ、流先輩……」
やってきた先輩の姿にかじるのを一旦とどまった。
連れの姿を見やり、一瞬目を丸くしたが、
(ああ、そうか、妹いるんだっけな)
すぐに合点がいった。それから、魚を眺めて、
(すこし、小さめのも買ってきてよかったな)
そんなことを思った。ひょいと手を伸ばし、
「これ、これ以上焼くと焦げちゃうんで。よかったら、どなたかどうぞ」
河内兄弟のほうに差し出した。
[60] 心境。 投稿者:河内 雫 投稿日:2001/09/11(Tue) 11:40
昼はあっちの浜でバーベキューだ。
そんな兄の言葉に一緒に付いてきてみれば、そこに居たのは自分の知らない人たちばかりで。
人見知りは、元々さほどまでに激しくはないが、やはり多少、気後れがした。
人の輪の中に、もうひとりの兄を見つけ、その横にちょこっと座った。そこならば、安心出来るから。
「良いのか? 先貰っちゃって。悪ぃな」
と、兄の声に顔を上げると、手には串に丸ごと刺さった魚が居て。
「雫、ほら。くれるって」
手渡されたそれは、確かにおいしそうな匂いで。
と、見やった目線の先に、こちらを向いている人物を発見した。
多分、魚をこちらにくれたのはこの人だろうと思ったから。
「ありがとうございます」
礼の言葉と共に、ちょこんとお辞儀を返した。
「ほんじゃ、俺ちっと行ってくんな」
「無駄に買いすぎるなよ」
「俺がくう限り無駄にはなんねぇの。んじゃ雫、後でな」
手を振り、来た方向へとって返す兄に「いってらっしゃい」声を掛けて、手に持った魚に、口を付けた。
[61] 熱砂の浜 投稿者:加納 由以 投稿日:2001/09/11(Tue) 13:04
夏向けのワンピースに身を包んだ後輩の女子が、一目散に駆けてきたのを
優しく受けとめてやる。麦藁帽子の下影で目が滲んでいた。
「怖い目に遭ったのね、彩香……?」
穏やかな甘い母の声で慰めてやろうかと思う。
「はい、でも助けてもらったから……ううん、やっぱり怖かった~」
安心して涙腺を決壊させた彼女を抱きとめた手が背中をポンポンと叩き、
もう片方の手で、ゆっくり頭を撫でてやっていた。
事情を聞くと、彼女は好奇心に誘われるがまま山への道を上っていき、
小さな社に行き着いたところ、数人の男どもが女性をなぶろうとしている
場面に遭遇し、運が無かったのか自分も見つかって押さえ込まれたのだと
いう。
「でも……信じられないんですけど、そのボロっちい社から人が出てきて、
早く逃げろって……男たちと戦ってくれて」
「どんな人だった?」
「……白い服を着てました。汚れてるみたいで、神主さんが着るようなの
じゃなくて……コートだったのかな?あたしは、そこまで見て後は一生懸命
逃げてきて……」
「そうだったの。でももう安心よ、私たちも皆もいるんだから」
「はい(^^)あ、でもあの人は……大丈夫かしら」
[62] 散策 投稿者:加納 洋人 投稿日:2001/09/11(Tue) 13:44
クラブの連中と一緒に遊びだした由以を置いて、彼は市街地へ足を伸ばした。
穴場の海浜のこと、派手な遊び場を期待したわけではない。この旅の空の
下しか触れることのできない何かを探してみたくなったのだ。
古い木像や奇態な建物、奇岩に絶景、そういったものに巡りあえないものかと
暫し流離う。
地元と思しき少女たち3人が行く手から歩いてくるのを見て、会釈して
やってすれ違う。はにかんだ顔が目に残った。
(地元の美少女ってのに遭遇しないかな)
そう思っていたら、何か見覚えのある顔がやってきた。
「扇谷と山内じゃん。お前らも海水浴?」
二人の男がギョッとした顔でふりむいた。
彼ら3人は友人というほどの仲ではない。洋人の所属する星火学園高校
剣術部と、二人の所属する大和向陽高校剣術部は、ここ数十年のあいだ
ライバルとして緊張した関係にある。この1人と2人も、プライベートで
仲良くなる意思もキッカケも無かった。
洋人が干渉したのは彼自身のもつ気安さのせいだった。
「……おまえと遊んでる場合じゃないんだよ」
扇谷はそう毒突いて、青痣のできた顔を起こし片足を引きずるように
歩き出した。
「ケガをしてるのか?だったら」
「うるせえよ馬鹿!」
「まだ何も言ってないのに……」
[63] 竈の前で 投稿者:青木 ユカ 投稿日:2001/09/18(Tue) 15:49
「大判焼きっていったらアレだろ? 鯛焼きが丸くなったみたいな」
萩乃に思い出した印象のままに答える。
記憶が間違っていなければ確か和菓子の類だったはずだ。
「鯛焼きは知ってる? 鯛の形をした型に溶いた小麦粉流して、中に餡とか入れんの。
大判焼きは中の餡子の代わりに白餡とかグラタンとか入ってるのもあってさ。
ピザ味とかオカズ風のモノから、甘ったるいところではイチゴクリーム味なんてのもあるところにはあるよ」
一応最後に「確かね」と付け加えておく。
もしかしたら自分の勘違いもあるかもしれない。
「ところで萩乃サン、顔が赤いよ。竈の火の熱に当てられたんじゃないの?」
折った枝を炎の中に放り込みながら少しからかうように言って、後ろを振り向く。
「今その大判焼きを買いに行ったのが河内流だっけ?
で、あっちが河内荒か……いいね、ウワサの男前が二人も、豪勢じゃん」
ふと気づくと傍で食材の魚を突付いていた高田まゆも、同じように顔を赤くしていた。
しかしこちらはあまりからかう気にはならない。
さらりと流した視線の先に見慣れぬ小さな女の子が映る。
「あれ? あの子見たことないね。河内兄弟の妹サンかな」
目が合ったようなので、手を振ってみた。
「よ。魚美味い? こっちおいでよ、一緒に食おう」
それともこちらの方から行った方がいいか、と隣の兄を見ながら思った。
[64] ふぃ~。 投稿者:船橋 瑞穂 投稿日:2001/09/19(Wed) 00:53
「あぁ、泳いだ泳いだ」
思わず声を出してしまった。
向こうに見える島まで、三往復。
ついでに島を二周してようやく帰ってきた。
あと、もう一周、いや二周はできたかもしれない。
深奈美さんと聡ちゃんはどこいったかな?ん、まとりあえず…。
「よもぎちゃん、よもぎちゃん」
ぺちぺちと頬を軽く叩いてみる。
「寝てる…」
[65] ぼーっと 投稿者:渡瀬 よもぎ 投稿日:2001/09/19(Wed) 20:30
頬にあたる感触で目が覚めた。
焦点を目の前にぼんやりあわせる。
「……瑞穂ちゃん……?」
「……濡れてる、ね」
友人の姿を認識しはじめる。
「……雨?」
雨で濡れたのだろうか、と真剣に(しかしぼんやりと)思った。
自分の状況認識はまだできていない。
空はどこまでも青い。
[66] さかな 投稿者:巴 萩乃 投稿日:2001/09/19(Wed) 20:31
「まあ……おいしそうですわ」
大判焼きの説明をきいて、そう言った。甘いものは、わりと好きだ。
それから、串にさした魚に手をのばした。
いい匂いがする。
「これを食べたら、すいか割りですわ。楽しみですわ」
本当に本当に、どきどきだ。
すいかがかなりあったまっていそうだとしても。
「いただきます」
魚をかじろうとして、ふと、疑問がわいた。
(……どこから食べたらいいんですの……?)
わからなくて、串をくるくると回して魚の全体像を把握する。
(…………)
やっぱり、よくわからなかった。もうすこし回してみようか、と彼女は思った。
[67] なんとやら。 投稿者:河内 荒 投稿日:2001/09/19(Wed) 22:46
こっちにおいでよ。
そう声をかけられた雫が、何故か自分を見上げた。
「…どうした?」
こんな端に座っているより、向こうにいた方が食べ物も取り易いはずだ。
そう思いながら、声をかけたのだが。
「え、っと」
妹は少し口ごもった。彼には全くその理由が判らない。
この辺り、流に云わせるところの「オマエはオンナゴコロってのが解んないかね」というものなのだろうか。
……解らないものは、仕方ないじゃないか。
この場に居ない弟に向かって、心の内で文句を言った時。
「おー! いい匂いだねぇ~!!」
噂をすればなんとやら。
瞬間、そんな言葉が脳裏に浮かんだ。
[68] 脳天気、全開。 投稿者:河内 流 投稿日:2001/09/19(Wed) 22:59
「もうサカナは全部食えんのか? うっし、食うべ食うべ」
にっしっし、と笑いながら、かまどへと近づく。
と、気付いた。
「なんでそんなすみっちょに座ってんだ?」
荒はともかく、雫も付き合ってそんなとこに座ってやることは全くないのに。
「そこじゃ食いづらいだろ。んーっと」
料理に近い隙間を探すべく、視線を辺りに一巡りさせると。
「…あれ?」
さっきは適当に「女子万歳」でくくってしまった集団の中に、覚えの有る顔を見つけた。
「確かまゆちゃん、だっけ?」
呼んだ声に顔を上げるのを見て「あ、やっぱ合ってた」ニッ、と笑った。
「覚えてる? 体育祭んとき、借り物走ったろ? へー、なんか奇遇だなぁ」
「はは、女の子は覚えたら忘れないの。俺。あ、その辺、混ぜて貰ってもいいか?」
半ば強引に己の場所を決めると、返事も聞かずにさっさと座した。
「ほら、雫、んなとこ居たら食えないぞ。おい荒、オマエどーうしてそういう気配りしないかなー」
と、ようやく何故自分がこの場を離れたか、を思い出す。
「あ、大判焼き、この辺おいとくな。えーっと、あんことチーズとクリーム。
…あれ、どれがどの味かわかんねぇな。ま、いっか」
[69] 海の家からこっそりと。 投稿者:行徳 浩二 投稿日:2001/09/19(Wed) 23:12
まぁつまり自分は安いバイト代で一夏の三分の一という貴重な時間をを過ごしているわけであるからして。
「こん位は、まー、許容範囲ってやつだよなー?」
キャベツ一玉、にんじん6本、肉はさすがにあまり持ち出せなかったが、取り敢えず焼きそば麺はゲットした。
それらを適当に買い物袋に詰め、こうして持ち出して来たのである。
戻って行くにつれ、いい匂いが鼻孔をつき始めた。
「ハラ減ってる時ってのは、魚の匂いっくらいでも胃にくるよなぁー」
とっとと作ってとっとと食おう。
思いと共に、歩くスピードも速くなる。
尤も、急ぎ足の理由に関しては、「あれだけの人間に俺の料理が食わせられる」なんていう方が大きかったりもするのだが。
「…人間、増えてないかー?」
見えてきた人数を数えるに、なんとなく、そう思った。
「さすがにキャベツ一玉はアレかと思ったけどもー、なんかOKそうかー?」
思わず、顔に笑みが広がった。
「お待たせー。さー、焼きそば作っぞー!」
伯父に対する慚愧の念は、さくっと彼方に消え去った。
[70] しばらく様子を見て 投稿者:青木 ユカ 投稿日:2001/09/20(Thu) 02:41
相手が困っているようだったので、やはり移動しようかと考えた時。
賑やかな声がして、その声に促されるままに女の子が移動してきた。
その隣の河内荒も一緒だ。
つくづく似ていない兄弟だな、顔は一緒なのに。
戻ってきた相方と思わず見比べつつ、そう思う。
「雫ちゃんていうんだ? あたしは青木ユカ、ヨロシクね」
傍に来た女の子に紙コップを渡してジュースを注ぎながら、
「ところで、ねえ。あの二人って雫ちゃんのお兄さん?」
だとしたらさぞかし自慢の兄貴たちでしょ。
そう言って笑う。
気がつくと隣の萩乃が焼き魚を手に難しい顔をしていた。
なんというか、岩場でウミウシを見ていた時といい今の様子といい、
かわいらしいな、とユカは思う。
「萩乃サン、なに悩んでるのさ。こんなモン適当にその辺からかぶりついちゃえばいいんだよ」
見本を示そうとして、しかし。
自分もどこから口をつけるべきか迷ってしまった。
[71] びっくり 投稿者:高田 まゆ 投稿日:2001/09/20(Thu) 03:40
自分の名前を呼ばれてドキッとした。
何より自分なんかの名前をまだ覚えていてくれたことに、驚いた。
覚えてる? の言葉に、
「そ、それはもちろん覚えてますー!
流先輩と走れたことって、すごくその、忘れられないというか」
あの時はびっくりしたし。
それに嬉しかったし、と最後の方は口の中でごにょごにょになってしまった。
「あ、大判焼きですねぇ。美味しそう~」
広がった香ばしい香りに思わず洩らしてから、催促に聞こえやしないかと慌てて口をつぐむ。
でもこれは食べてもいいのだろうか?
どうも数からして人数分あるようだし、それにこうやって取りやすいように置かれてもいるし。
しかし自分からそれを確認するのは何やら恥ずかしい。
そんなことを考えていると聞き覚えのある声が後ろからした。
「行徳くん、お帰り~」
やきそばと聞いて、その手荷物の量に納得する。
自分も何か手伝った方がいいかな、と考える。
[72] うん 投稿者:狩谷 東 投稿日:2001/09/24(Mon) 20:22
うまいな、と一口食べて思わず感想をもらした。
「しかし、行徳、これって売り物そのものなんじゃないのか?」
材料は同じ、調理する人間も同じだ。
平気なのか、と思ったものの、嬉しそうに作る友人とそれを食べる面々を眺めてしまうと、あまり色々言う気にもなれない。
それに、もう焼いてしまったのだから、どうしようもない。
いざとなれば、行徳の叔父上に一緒に頭を下げに行くのみだ。
「まだおかわりできるぞ」
呼びかけた。
こうなったら残さず食べるが礼儀だった。
[73] 満腹 投稿者:巴 萩乃 投稿日:2001/09/24(Mon) 20:24
魚も食べた。焼きそばも食べた。大判焼きも、食べた。
「……おなかいっぱいですわ……」
焼きそばがまだ残っているようだが、もう入らない。
そういえば、カキ氷も食べたのだ。
思い出して、ますますお腹がふくれたような気がした。
「ごちそうさまでした」
ぺこりと頭をさげ、ごみをごみ袋に放りこんだ。
かまどから少し離れて、スイカが置いてあるところでしゃがみこむ。
(どうしましょう……)
なんだかんだでずいぶん時間がたっている。皆、スイカを食べられるだろうか?
彼女は手のひらでなでるようにスイカをごろごろ転がした。
[74] 発見 投稿者:船橋 深奈美 投稿日:2001/09/25(Tue) 01:14
「ああ、瑞穂ちゃん、こんなところにいたのね。よもぎちゃんも」
おおかたそんなところだろうとは思っていたが、この2人はそれぞれ対照的な時間を過ごしていたらしい。
「ちょっと遅くなったけど、おやつにしない? せっかくクーラーボックス、持ってきたんだし。 よもぎちゃんもよかったらどうぞ」
[75] スイカ…? 投稿者:佐竹 藤子 投稿日:2001/09/25(Tue) 01:27
「スイカ割りですか? 夏の醍醐味ですね…」
萩乃がごろごろ転がしているスイカが目に付いた。
スイカの大きさの平均値はよくわからないが、立派な大きさだ。
「そういえば、スイカの皮というのは漬け物にするとおいしいとか」
ただ、味が全く想像できない。
キュウリみたいな食感なのだろうか?
[76] 宇宙な胃袋、カモ知れない。 投稿者:河内 流 投稿日:2001/09/25(Tue) 23:15
「スイカ!?」
腹も大分ふくれて幸せに浸っていた時に聞こえた声は、流の別腹を刺激した。
「おおおおでっけぇ! これ、割って食うのか?」
スイカを転がして居た彼女に、向き直り訊ねる。
…というよりは。
「スイカ割りかー、海の醍醐味だよな! 夏と云えば海! 海と云えば砂浜!
砂浜と言えばスイカ割り! んー! 日本の夏!」
語り散らすだけ、かもしれない。
[77] 満足。 投稿者:行徳 浩二 投稿日:2001/09/25(Tue) 23:22
「やー、やっぱ食いきって貰えると作った甲斐ってのもあるもんだよなー」
そしてこっそり、証拠隠滅にもなるしな、とも、思った。
「ん? スイカの漬け物?」
その言葉に、記憶を反芻した。
祖母の、昔ながらの生活の知恵にも似た、レパートリーの数々。
「ぬか漬けとか、粕漬とか、ある様な気もー…すっけどー…」
まぁ、瓜科のものだし、白瓜とかキュウリの味わいなのだろう、とは思うが。
「生憎、未だ食った事ってのはねーんだよなー。
割ったら、そいつで作ってみるかー?」
ははは、と冗談交じりに、そう云った。
さすがに糠床迄は、現地調達なぞ出来ないだろうから。
「…んで」
と、思い出した。狩谷に向き直り、訊ねる。
「スイカ割り、すんのはいいけどなー、棒、あるのかー?」
[78] 輝 投稿者:巴 萩乃 投稿日:2001/09/27(Thu) 19:56
「まあ、スイカの皮を漬け物に……」
藤子の言葉にすこし目を丸くした。
「どんな味なのかしら……」
そうつぶやいて、またスイカをごろごろ。
その手がピタッと止まったのは、かけられた声のせいだった。
「そ、そうですわ、割って食べるのです……」
声がうまく出ず、尻つぼみになる。
だが、河内流の言葉をきくうち、だんだん、彼女の顔が輝きだした。
「そうです、そう思いますでしょう?? 夏で海といえば、スイカ割りですわ!
わたし、ずうっとずうっとそう思っておりましたの。
でも、今まで話にきくだけで、機会がちっともなくて……」
そもそも、海に来た回数が少ないのだ。
「ですから、今回、ぜひともやりたいって思ったのですわ。
なんだか渋い顔をされたりもしたのですけれど……。
河内先輩のような方がいらっしゃって、とても嬉しいですわ!」
「申し遅れました、わたし、1年の巴 萩乃といいます。
先輩、御一緒にやっていただけますか? スイカ割り」
しまいに声まで輝かせ、にっこりと自己紹介までしてのけた。
[79] 苦笑ぎみ 投稿者:狩谷 東 投稿日:2001/09/27(Thu) 19:56
手放しで賛成の意(?)を表してもらったのがよほど嬉しかったのか、
物怖じせずに流としゃべりだした萩乃を見て苦笑した。
(渋い顔って、自分で持ってくれりゃ俺だってそんな表情しないけどさ)
心の中で、文句を言う。まぁ、今更すぎる話だ。
行徳に棒のことをきかれ、
「ああ、あるよ。万事、ぬかりなくな……」
答えて、えっと、と辺りを見回す。
あった。長めの棒と、目隠し用の布。
「……で、やるのか?」
誰ともなしに、尋ねた。
[80] ぼんやりと 投稿者:渡瀬 よもぎ 投稿日:2001/09/27(Thu) 19:57
「こんにちは……」
深奈美に挨拶する。
瑞穂はどうやら家族と一緒に来たようだ、ということに遅れて気がつく。
自分も、誰かとくればよかっただろうか?
弟や妹はきっと喜んでついてきただろうが 、なんとなく誘わなかった。
というよりも、気がついたら日にちが押し迫っていたのだった。
「おやつ……」
言われて気が付いた。
「……いただきます……」
自分は昼ご飯を食べていない。
[81] 彼の希望。 投稿者:河内 流 投稿日:2001/10/01(Mon) 17:32
「あ、そーか、自己紹介ってしてなかったっけ?」
萩乃に云われて、やっと気付いた。
この場に居る人間の、殆どの名前が解らない状態だったことに。
でもまぁ今んトコどーってこたねぇか。
脳天気に軽く結論づける。
「萩乃ちゃんかー。宜しくなー。俺はー…って、これは解ってんのか。
ご一緒? とーぅぜん! せっかくスイカ有るのに、やらないのは勿体無いだろ~」
ニカッと笑ってから、問う響きの声に、振り向き応えた。
「そんなわけで俺は超やる気満々なんだけどもー……あ、萩乃ちゃんもやるよな?
……他に誰もいねぇの?」
ぐるりと、一同を見渡した。
[82] 彼の懸念。 投稿者:河内 荒 投稿日:2001/10/01(Mon) 17:46
「やるなら…早くした方が良いだろうな。そろそろ日が暮れる」
時計に目をやり、呟くようにそう云った。
「まぁ、割る割らないは別にして、そのスイカは食べきらないと勿体ないだろうが」
と、彼は事実のみをただ口にしたつもりだったのだが。
「んだよ、つまんねーヤツだなー。いいじゃん、スイカ割り。夏の海の醍醐味だぞ?」
案の定、というべきだろうか。弟は、そう突っかかってきた。
「だから、やるならやれって云ってるんだよ。俺はパス」
「付き合い悪ぃな。たまにはそのジジィ根性やめろよオマエ」
「お前の行きすぎたガキ臭さに付き合う気は起きなくてな」
と。
「えと、荒くん、流くん」
その妹の声に、そういえば人前だ、とここに来てようやく思い出した。
まだ、いつものように教室内程度だというのならともかく、殆ど初対面の人間ばかりの場で、だ。
…何をやっているんだ。
思わずいつもの調子で言葉を応酬していた自分に、ため息が漏れた。
「…取り敢えず、火の始末、しておくか…」
空いたペットボトルを手に取ると、海水を汲みに、水際へと向かった。
[83] 手配 投稿者:佐竹 藤子 投稿日:2001/10/09(Tue) 02:28
「折角ですから、みなさんでやりましょう」
と、白い布を手に取った。
ささ、と萩乃を促して手早く目隠しをする。
「よろしいですか? それでは失礼して…」
萩乃の身体を数回回転させて。
「これで、万事整いましたわ」
肩に置いた手を離した。
[84] とう! 投稿者:巴 萩乃 投稿日:2001/10/09(Tue) 22:31
ぎゅっと棒を握り締め。
ちょっぴりふらふらしながら、それでもどうにか歩き。
かけられる声で検討をつけて頭上に棒を振りかぶった。
「えい!」
ぱこん。
やけに軽い音。
それでも手ごたえはあったので目隠しをとった。
そこには、まったく無事なスイカの姿が。
「…………」
じーっと上から眺めて、しゃがみこんで眺めて、手で触って眺めて。
「どうして割れないんですのーっ!?」
べしべしべしべしと平手でスイカを叩いた。
彼女の非力さ加減にあきれたかのように、スイカはびくともしない。
[85] 発見! 投稿者:船橋 瑞穂 投稿日:2001/10/11(Thu) 01:17
どうも見たことがあると思ったら。
「やっぱり、ユカじゃないか」
部活の後輩だった。
いったい、いつ来たんだ? と言いかけたが
自分が泳いでいる間に来たんだろう、ということに気づいてやめた。
「え、えーと、スイカ割りかい?」
---------------------------
11月2日 企画終了しました。
---------------------------