(自宅の電話) ……ああ、そうなのよ。 礼儀のできた子だから相手してあげたってのに、あんな幽霊みたいな女に引っかかって。 どうにかできないものかしらね。 「どうでしょうね……彼女、空手部の主将より強いんですよ?学園祭の夜に大和向陽や木犀の強豪を残らず蹴散らしたという噂もまだ生きていますし」 ……そんなもの信じてるの?じゃあ何、家の事情とか泣き所になるようなものはないの? 「天涯孤独なんです」 ……は? 「裏山の向こうに、廃屋となっていた天文台があるのはご存知ですか?彼女、そこを何らかの手段で自分のものにして一人で住んでいるようです。といって、あそこにはもう電気も水道も通っていませんが……お金などの仕送りが送られてきた形跡はどこからも出ませんでした」 ……ちょっと待って、頭が…… そ、そんな山の妖怪みたいな人間と同席してたんですか私たちは。 「何でもアリですから」
(心の声) ……それならどうして、制服も髪も肌もあんな完璧に手入れができているのかしら。
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