昨夜、movies+でラブアクチュアリー(クリスマスのいろんなカップルのエピソードをオムニバス形式でつづった映画、マーティンとかリーアムとかヒューグラントとかアランリックマンとか出てます)をやっていて、こんな初夏にめちゃくちゃクリスマス気分になりました。
サラ(ローラ・リニー)が会社のパーティでちょっと気になってる男性からダンスに誘われるシーンでこれHan/Lukeだったら…!とうっかり考えてしまったので書いてみました。
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「ハン、嫌だって…!」
引かれた手をふりほどくこともできず、紺色のジャケットを追いかける。甘ったるいアルコールと汗と誰かの香水が混ざった暗がりで、ランダムにきらめく灯りが時折年上の操縦士の髪や肩を照らしていた。
エコー基地で最も広い待機室は今夜、間に合わせのパーティ会場になっている。どこかの惑星の年に一度の祝祭にかこつけて、立場やランクに関係なく招待された宴は予想以上に盛況だった。
見知った顔が多い筈のその場所で、辺境出身の青年は雰囲気にすっかり圧倒されていた。
相手の表情がやっと判別できる程度に絞られた照明の中、誰かが用意したスピーカーからアップテンポの曲が流れてくる。どこかの隊が提供した自家製品も多分に混ざったアルコールで陽気さを増した兵士たちが思い思いに場を盛り上げている。
上質とはいえない音でBGMを発し続けるスピーカーにほど近い一角はリズムに合わせて身体を揺らす集団が占拠している。幾度かダンスに誘う言葉をかけられ、そのたびに首を降り続けたルークは、断っても全く怯む様子のない彼らの態度が本気かどうかはかりかねていた。
「踊らないのか?」
年上の密輸業者にそう聞かれたときは、ハンまでそんな冗談を、と笑ってしまったくらい、その誘い文句はルークの中で酔っぱらいの戯れ言として片付けられていた。
「行ってきたらどうだ、ボス。たまには羽目をはずしてもいいだろ」
いつの間にか隣に立っていたウェッジが半分ほど中身の残ったプラスチックカップを取り上げる。抗議の声を上げる間もなく、空いた右手が掴まれ引っ張られた。
「ちょっと…ハン、行かないってば」
踊らないし踊れないよ、と抗議の言葉を重ねているのに、繋がれた手は相変わらずの強引さで身体を前へと連れていく。
「ハン、冗談だろ」
いやだ、戻る、と文句をぶつけても、目の前の背中はびくともしない。臨時のダンスフロアの真ん中で振り向いたその顔は、きっと人の悪い笑みを浮かべているに違いない。改めて文句を言おうと口を開きかけた途端、浮ついた空間を揺り動かしていた音楽が止んだ。
間をおかずに流れ始めたBGMはスローな曲に変わっていて、雑多に揺れていた周囲の人影はいつの間にかペアになり、互いの肩や腰に手をまわしている。
引かれていた手を解かれ、向かい合わせに抱き込まれる。とたんに近づいた距離に息をつめると、繋がれていたのと逆の手が指先に触れた。口づけのような距離から肩口へと顔を寄せられ、こくりと息を飲んだ。
ダンスなんてやったことない、こんなところで恥を晒したくない。言いたい文句なんてたくさんあった筈なのに、リードされるままぎこちなく身体を動かす。安全な部屋の隅に戻りたいと思うのに、何故かそれを言葉にすることができなかった。
「どうせあとでからかわれるんだろ…」
「周りを見てみろよ。誰もこっちを見てないぞ、坊や」
掠れた声でやっと吐き出した小さな悪態は、低く心地良い声に丸めこまれてしまう。長身のダンスパートナーの肩越しに周囲を見渡せば、たしかに誰もこちらを見ていなかった。ぎらぎらと光のかけらを振りまいていたいびつな照明は、今は水中の泡のような灯りをまだらに浮かび上がらせている。
重なって揺れる人ごみがフロアの外からの視線を遮ってくれることに気づき、ほっと安堵の息をつく。力の抜けた腰を引き寄せられ、温かな体躯がさらに近づいた。
親密な仕草に鼓動が跳ねて、青年は息を止めた。すがりつくような体勢で、おそるおそる男の肩に頬を寄せる。衣服ごしに密着した部分から伝わってきたのは、思い切り走った後のような自分のそれより少し速い心拍数。
いつでも余裕たっぷりの年上の操縦士の意外な一面を見た気がして、口元が緩む。空気を揺らす音楽と同じリズムで重心を傾け、ルークは男の肩に笑みを隠した。
戻ったときにローグ中隊の面々にからかわれるとしても、こういうのもたまには悪くない
──そんなことを考えながら。
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ホスのハンとルーク。
つきあっててもつきあってなくてもいいです。
余裕そうにみえて実は(本命の相手と)スローダンスなんてほとんど経験なくてちょっと緊張しちゃってるハンソロさんとかいかがでしょうか…
原稿ぜんぜんすすまなかった(懺悔)