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鬼の子
加納旬 高等部 3年生 女子
なに、本当に唐突だね。
裏山の丘ひとつ越えたところに、廃棄された天文台があるの知ってる?ボクはそこに済んでるんだ。
電気もガスも水道も死んでるけどね。あまり豊かな山じゃないから、食べ物や燃料を街で買ってきて、料理の下ごしらえをして、服の手入れをして……そうやって一日が終わるの。
その合間に体を鍛えたり、本を読んだり……長い休みの日にはこうやって着飾って街で遊んだりもする。
驚いた?
でもボクは、他の皆と同じ速度で、方向で、生きていけないんだよ。
ボクを受け入れてくれたケントやレイのことは、本当にありがたいと思ってる。
でも……
(どこかで響く悲鳴にかぶせて)
やっぱり一人で帰らないといけないんだ。
(レストルーム入り口の向こうから後続の声が聞こえてきた)
[本体:リュー]
8/30 11:33