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……まだ引きずっているのか……
吉良浩二 高等部 2−E 文芸部
〔ふと外を見ると、見知らぬ観光客らに駆け寄ってゆく進に目が留まる。〕
………?
〔その尋常ならぬ様子が気にかかり、食べかけの焼きソバを置いて外へ出る。〕
……どうした
「ねぇ、あなたチュンヒャンでしょ。私よ、覚えてるでしょ?」
「……?」
「言いたいこと、たくさんあるんだ。ちょっとだけでいいから、私と」
「ちゅんひゃん? え〜、何人よそれ。」
「韓国っぽくない? ほら冬ソナに出てきそうな名前じゃん」
「ヤダ、人違いよ。私ニッポン人!」
「それよりさ、君、すっごい美人だね。もしかしてグラビアとかやってない?」
「ねね、一緒に遊ぼうよ。これも何かの縁ってやつ」
〔呆然とする進と数人の男女の間に入って〕
……すみません。連れが迷惑を。
〔進の手を引き、彼らに止められるのも構わず海の家に連れて戻る〕
……気にするな。
「うっせぇよ、……ばか。」
[本体:森陽]
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