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深まる疑惑
穂波旅人 高等部 1−C
(車で送ると言われて)
いや、俺は……
(と、ここまで口にして、また唐突に妙な感覚を感じた)
(今度も先程の「違和感」とでも言うべき感覚と同じ様な、しかしどこか違う様な感覚だった)
……あ……?
(世界の輪郭が歪むような、何か目に見えない波紋が脳に直接ぶつかるような、表現し難い感覚に襲われ、平衡感覚を失いかけてよろめきそうになる)
(その時、完全に死角になっていた方向から、稲妻のように鋭い感覚が飛んでくる!)
(すると反射的に体が反応し、振り向きざまに姿勢を低くしながら腕を伸ばし、膝の力が抜けたようにバランスを崩した春奈を抱き止めた!)
…っと……、大丈夫…?
(言いながら膝に力を入れて姿勢を整え、相手もそれに倣わせる)
「……えぇ、…平気…です……」
(見下ろしてすぐのところから返ってきた声が驚いたような照れたような表情から出ているのを見て、自分が相手を胸に押しつけるように力強く抱いていることに気付き、慌てて束縛を解く)
(照れて視線をはずし、春奈が一歩下がるのを気配だけで感じ取ると、藍ちゃんに向き直り)
……えぇと、俺もやっぱり、お願いしていいかな……?(苦笑)
…そんなに遠くないから、心苦しいんだけど……。
(そしてちらっと春奈を見やり目で問うと)
「……私は……、……いえ、私も、…重ねてご迷惑をおかけしますが、お願いしてもよろしいでしょうか……?」
……だ、そうです。(笑みを藍ちゃんに向ける)
(そして藍ちゃんが電話に戻るのを確認すると、もう一度ゆっくり春奈の方を見てみる)
(すると春奈も上目遣いにこちらを盗み見ていて、目が合い、二人で慌ててまた視線をはずした)
女子の制服、上着のウエストあたりにポケットありませんでしたっけ?(←うろ覚えですが)
[本体:淡 楓]
6/30 04:15